「売ろうと思って価格の目安を出してもらったら、ローンの残りより安かった」
投資用ワンルームの売却相談で、よく聞く話です。
売りたいのに売れない。正確には、売ると手元のお金を足す必要があるから売れない。
なぜこうなるのか。原因は大きく4つに分かれます。
1. 買った時期と価格
新築で購入した区分ワンルームを中古として売るとき、新築時の価格を下回ることは少なくありません。
新築の販売価格には、販売会社の広告費・人件費・利益なども含まれています。
一度人が住めば「中古」として取引され、その上乗せ分がそのまま価格に残るとは限りません。
これ自体が投資として間違いというわけではありません。
問題は、その前提を知らずに買っていることです。
2. 残債の減り方が遅い
元利均等返済のローンは、返済当初ほど返済額に占める利息の割合が高くなります。
毎月きちんと返していても、元金均等返済と比べれば借入残高の減り方は遅くなります。
一方で物件の価格は、築年数とともに下がっていくことが一般的です。
価格の下がり方が、残債の減り方より速い期間が生じることがあります。
この期間に売ろうとすると、売却代金だけでは残債を返しきれません。
これが「売るに売れない」状態の正体です。
返済が進むと、この関係が逆転することもあります。
ただし、いつ逆転するかは物件と借入条件ごとに違います。
自分がいまどちらにいるのかを知ることが、出口を考える出発点になります。
3. 管理費と修繕積立金の上昇
購入時のシミュレーションでは、管理費と修繕積立金が
ずっと同じ金額のまま計算されていることがあります。
修繕積立金には、はじめは低く設定し、段階的に引き上げていく計画(段階増額積立方式)があります。
国土交通省のガイドラインは、この方式について、当初の額を「均等に積み立てた場合の月額」の0.6倍以上、最終の額を1.1倍以内とする考え方を示しています。
当初を0.6倍、最終を1.1倍とした例では、最終の額は当初の額のおよそ1.8倍になります。
実際の引き上げ計画はマンションごとに違います。ガイドラインの考え方が示される前に作られた計画では、上がり幅がもっと大きいこともあります。
管理費と修繕積立金が上がると、手元に残る家賃が減ります。
買主から見た実質利回りも下がるため、売却価格を押し下げる要因にもなります。
二重に効いてくるわけです。
4. 賃料の下落
築年数が経つと、募集賃料は下がる傾向があります。
設備が古くなり、周辺に新しい物件が増えるためです。
投資用マンションの価格は、賃料をもとに考えられる部分が大きいため、
賃料が下がれば、価格も下がりやすくなります。
サブリース(家賃保証)が付いている場合も同じです。
保証賃料は、契約によっては一定期間ごとに見直され、下がることがあります。
「保証されているから安心」とは限りません。契約書の見直し条項を確認してください。
サブリースの解除や売却を検討している場合は、サブリース物件の売却で確認する6項目をご覧ください。
出口を確認する方法
いま自分の物件がどの状態にあるか。次の4つを確認すると、売却時に必要な資金と、持ち続ける間の負担を計算できます。
| 確認すること | どこで分かるか |
|---|---|
| ローン残債 | 金融機関の返済予定表 |
| いまの売却価格の目安 | 不動産会社に出してもらう価格の目安と、その根拠(近隣の成約事例など) |
| 毎月の収入と物件の運営費 | 賃料または保証賃料と、管理費・修繕積立金・管理委託料・固定資産税・保険料など。サブリースは契約ごとに控除される項目が違うので契約書で確認 |
| 修繕積立金の今後の予定 | 管理組合の長期修繕計画 |
売却価格の目安 − ローン残債 − 売却にかかる費用
これがプラスなら、手元のお金を足さずに売却できる可能性があります。
マイナスなら、売るときに差額を用意する必要があります。
売却によって譲渡所得が生じた場合は、所得税・住民税の対象になることがあります。
税務上の利益は、売却価格とローン残債の差額ではありません。取得費や譲渡費用などをもとに計算します。
取得費のうち建物部分は、減価償却費相当額を差し引いて計算します。詳しくは税理士または税務署へご確認ください。
マイナスだったとしても、すぐに売らなければいけないわけではありません。
賃料・修繕積立金・金利がこの先どう動くかの前提を置いて、何年持つと差がどう変わるかを計算すれば、待つという判断もできます。
大事なのは、知らないまま持ち続けないことです。
まとめ
出口が詰まるのは、物件が悪いからとは限りません。
買った時期、返済の進み方、費用の上がり方、賃料の下がり方。
この4つが重なった結果として起きます。
そして、その多くは購入の時点で確認できる項目です。
いま持っている物件について、売るか持つかを決める前に、
まず残債と売却価格から売るために必要な資金を、家賃と支出から持ち続ける間の負担を確認してください。
毎月の持ち出しが続いている場合は、売る・持つを決める前の7つの確認項目もご確認ください。
当社では、売却時に必要な資金と、持ち続けた場合の収支を比べて、メリット・デメリットを正直にお伝えします。
持ち続けた方がいいなら、正直にそう言います。
強引な営業はしません。まだ売ると決めていなくても大丈夫です。
参考:
- 国土交通省「長期修繕計画作成ガイドライン・同コメント」及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」の改定について(令和6年6月7日)
- 住宅金融支援機構「元利均等返済と元金均等返済」
- 国税庁「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」「No.3252 取得費となるもの」


